速度の合成(Merminの思考実験)

簡単な数学の知識で相対論的な速度の合成則を次の通り導く事が出来る。今、宇宙空間を長さL(後方から先頭まで)のロケット(慣性系とする)が地球(静止系)から見て速度vで飛行しているとする。そこでロケットの後方の同一地点から光とボール(質点)を地球から見てWの速度でロケットの先頭(光が反射出来る様に鏡が置いてある)に向けて同時に発射すると、光はボールを直ぐに追い越し鏡に当って戻って来てボールとすれ違う筈である。ここで光が後方から先頭の鏡に到達するまでの時間をtとし、反射してボールとすれ違うまでの時間をt´とすると、この間ボールの進んだ距離W(t+t´)は、光速をcとすると、ct-ct´に等しい。即ち、

W(t+t´)=ct-ct´

又、ボールからロケットの先頭まで残った距離をfL(fは0≦f≦1の任意の比とし、観測者に依らない)とすると、光が先頭の鏡まで進んだ距離ctと反射してからボールとすれ違うまでの距離ct´は、ロケットが速度vで進んでいるのだから、

ct=L+vt 且つ ct´=fL-vt´

これ等の関係をLを消去して纏めると、先ず(W+c)t´=(c-W)tから、t´/t=(c-W)/(c+W)であり、次に(c+v)t´=f(c-v)tから、t´/t=f(c-v)/(c+v)である。故に、

f=(c+v)/(c-v)・(c-W)/(c+W)

所で、ロケットが止まっていれば(v=0であれば)、その時のロケット内から見た発射したボールの速度をuとすると、v=0なのであるから、上の式により、

f=(c+0)/(c-0)・(c-u)/(c+u)=c/c・(c-u)/(c+u)=(c-u)/(c+u)

従って、(c+v)/(c-v)・(c-W)/(c+W)=(c-u)/(c+u)、或いは、(c+v)(c-W)(c+u)=(c-v)(c+W)(c-u)

これを展開して整理すると、(-2uv-2c²)W+2c²v+2c²u=0となり(※)、移行して纏めると、

2(uv+c²)W=2c²v+2c²uであるから、両辺を2c²で割ってWに就いて解くと、求める結果である

W=(u+v)/(1+uv/c²)

を得る。詰り、uまたはvがcであればWはcでありW>cはあり得ない。換言すれば、常に W≦c なのである。(合成速度は光速を超える事は無い)

(註)※手計算が面倒な場合は、wxMaxima等の数学ソフトを使うと便利である。下記の通り。

(%i4) ratsimp((c+v)*(c-w)*(c+u)-(c-v)*(c+w)*(c-u)=0);

(%o4) (-2*u*v-2*c^2)*w+2*c^2*v+2*c^2*u=0

或いは、次を参照。計算結果

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